2015年08月15日

あの建物では最後の寿町フリーコンサートでステージ前のスロープが復活!

横浜寿町フリーコンサートは1979年から続いている。
コンサートが行われる場所は、市営住宅、福祉施設や職安があった寿町総合労働福祉会館と呼ばれる建物の「コの字型」に囲まれた中庭のようなスペースだ。
その会館が来年の春以降、耐震性のために建て替えされることになった。
「寄せ場」と呼ばれる寿町のあの建物、あのスペースであのコンサートが行われ続けているのは「奇跡」だ、とDVD『奇跡の詩』のライナーに書いたが、その建物が無くなってしまう。新しい建物はできるし、同様の空間もできるようだけど、同じ建物・同じ空間にはならないだろう。
寿町総合労働福祉会館2015.jpg
フリーコンサートは寿町夏祭りのなかの一日として行われていて、運営をしている夏祭り実行委員会もコンサート実行委員会も、今年はあの建物でできる最後の年ということで、特別の想いを持って準備してきた。
この数年は、中心になっているスタッフも世代交代し、「夏祭り実」や「コンサート実」という枠を超えて一体となった運営がされるようになったと思う。
街のど真ん中で行われるコンサートなので、苦情も来ることがある。そのため、「コンサート実」では以前から「おわび」と「ご参加のお願い」といったチラシを配っていたが、去年あたりからは「夏祭り実」のスタッフが中心になり、チラシを配るだけではなく挨拶と説明のために簡易宿泊所(ドヤ)の帳場の人がいる時間帯に合わせて訪問するなど、より街の状況に合わせた取り組みが行われた。

今年はあの会場での「締めくくり」になるコンサートにしたい、という気持ちがみんなの中にあった。
コンサートのステージと観客の間にあったスロープも、約10年ぶりに復活した。その気になればスロープを上がってステージに乱入できそうな舞台設定である。はじめてこの会場でスロープを見た時は、コンサートが盛り上がる中、いかにも「ここから上がってくれ」と言わんばかりにスロープがあって、実際に上がろうとするお客をスタッフが必死になって制止していたのが、なんとも不思議で「そんなに上がってほしくないのなら、こんなスロープはつくらなきゃあいいじゃないか」と思ったりした(笑)。
その後、フリーコンサートの動画を撮らせてもらうようになり、自分自身があのスロープの上で撮影し、「このスロープこそ寿町フリーコンサートだ」と思うようになった。
寿町フリーコンサートのステージは、一般の建材を使用しているという事もあって高さが高い。最前列からだと見上げるようになってしまうが、あのスロープの存在によってステージと観客との距離が縮まっている気がした。
コンサートの舞台は、前日に有志による手作業で建てられる。スロープは舞台ができた後につくらなければならないのだが、真夏の炎天下で作業をしてヘトヘトになってからさらにスロープをつくるのは、かなりキツイと思う。当初から祭りとコンサートを担ってきた人たちも年々歳をとり、作業は困難になった。コンサートの際にはスロープを登ってダイブする人がいるなど、危険だという事もあってステージ前のスロープは寿町フリーコンサートから無くなった。
そのスロープが、スタッフの気持ちと、作業をしてくれた有志のおかげで、今年は復活したのだ。

もちろん、スロープをつくる事で「リスク」も高まる。しかし、リスクを避けようとして守りに入ってしまうと「奇跡」は起きない。解放の場でもあるフリーコンサートをルールでがんじがらめにはしたくない。
スタッフの意思と、2005年から司会をしてくれている富士子さんの力もあって、運営側の気持ちは参加した人たちに伝わったと思う。

9年ぶりに出演してもらう事になった渚ようこも、2006年の出演時に「あの、通路みたいなのもあったほうが良かったな」と言っていた。
渋さ知らズのメンバーや舞踏の人たちは今回13年ぶりの出演だが、以前からあのスロープを有効に使っていた。
そして寿[kotobuki]のナビィは、いつもステージからあのスロープに降りて、お客さん届くように間近で歌うスタイルが象徴的だった。
2015、渋さ知らズ+渚ようこ
(渋さ知らズ+渚ようこ)

寿[kotobuki]の本番直前。お客さんの前に立てる瞬間を待っているナビィに、ステージの後ろで話を聞いた。

「やっぱり、この空間が凄い好きだったからね。この市営住宅のね……、」
「もう〜、リハの時から泣きそうだったよ。まあ、でも……最後だから、楽しみます。」
2015、寿[kotobuki]、寿町フリーコンサート

来年の春からは、建て替えのためにあの建物は壊される。新しい建物ができるまでの3年間ぐらいは、街の中のどこかのスペースで、夏祭りとフリーコンサートが行われる予定だ。
場所の選定や、周辺に住む人たちへの説明など、たいへんな課題があると思うが、粘り強く続けることで「奇跡の祭り」は続いていくだろう。

(文責:小林アツシ)
 
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